淨教寺仏教青年会委員長 佐藤 晋
毎年、淨教寺では秋にハイキングに行きます。例年、寺院の参拝も兼ねて紅葉のきれいな場所を選んで出かけるのですが、昨年は11月24日(月)振替休日に近場で奈良公園へ行くこととなりました。
しかし、今回はただ歩くのではなく、谷幸三先生の案内による自然観察をしながらのハイキングとなりました。
谷幸三先生は環境科学博士で元奈良商業高校生物学教諭、現在は大阪産業大学講師をしておられます。
谷先生は野外で講義をされることが多いためかよく声が通り、以前NHKの取材を受けた際に声が大きすぎてマイクが壊れたこともあるほどで、おかげで少し離れていても説明がよく聞こえました。
さて、今回のハイキングは10時に淨教寺に集合して、まずお寺で谷先生から奈良公園の生態系(エコシステム)の説明を受けました。
奈良公園には「日本シバ」という野生のシバが生育していますが、これはめずらしいシバで、この奈良公園と九州の一部以外ではあまり見られなくなったものだそうです。
そして、奈良公園の名物の天然記念物でもある鹿は「ニホンジカ」で奈良公園では現在、約1200頭が放し飼いにされています。
都会近郊でこんなに身近に鹿とふれあえるのは日本でも奈良市だけです。
またその鹿のフンを食べるコガネムシが約40種類住んでいて、その中には紀伊半島と奈良公園でしかみられないルリセンチコガネというめずらしいものもいるようです。
このように奈良公園は生産者としてのシバと、それを食べる消費者の鹿、さらにその鹿のフンを食べる分解者のコガネムシ、そしてその分解物が肥料となり、また生産者としてのシバが育つ、というふうに生態系のサイクルが出来上がっていると説明を受けました。
確かに、奈良公園では刈り取らなければ生育できないシバを刈り取っている光景を見たことがありません。
それを鹿が食べていることでバランスがとれているのです。
また、年間330トンといわれる鹿のフンはコガネムシたちによって分解されています。
これらの分解者がいないと公園中フンだらけとなってしまいます。
もちろんこのようなサイクルは、シバと鹿とコガネムシだけとはいえずもっといろいろなものが関係しあっていますが、代表的なものをあげるとこのようになるとのことです。
なお、詳細は当日のハイキングの資料に掲載されていますので、希望者は淨教寺まで。お寺を出たあとは、随時立ち止まりながら木々の説明を受け、またこの季節はドングリが落ちているのでそれを拾いながら歩きました。
ドングリはブナ科の果実の総称で栗も同じ仲間です。
ドングリを拾うときはその葉もいっしょにしてひとつの袋に入れ、名前を書き標本にしておくと、あとで見直してもよくわかります。
そしていろいろドングリやその葉を拾ってみると、それぞれが少しずつ違い、ずいぶんたくさんの種類があるものだとわかりました。
国立博物館付近まで来たとき、松の木の下で削られて芯だけになったマツボックリを見つけました。
たくさん落ちているので鹿が食べたのだと思っていましたが、実はムササビが食べたものであるようです。
ムササビはネコぐらいの大きさで「空飛ぶざぶとん」ともいわれています。
ムササビとは山奥にいるものと思っていましたが、こんなところにいるなんてちょっと驚きです。ムササビは昼間は眠っていて日没後に活動するので今回は見ることは出来ませんでしたが、今度暗くなったら見に行こうかと思います。
浮見堂でお昼のお弁当を食べ少し休憩し、飛火野へと行きました。
飛火野は十数年前にシルクロード博の会場のひとつとなりましたが、現在の飛火野は谷先生の働きかけによってもとの姿に戻ったようです。
また、若草山に登る南側の道路を通行規制し、現在は使われないようにしたのも谷先生の働きかけによってだそうです。
このことによって原生林が排気ガスから守られ、世界文化遺産として登録されることのきっかけとなりました。
谷先生は単なる学者や、先生というわけではなく、このように働きかけや活動を積極的にされています。
よりよく知ったからには次に我々が何をしなければならないか、ということがわかります。
そのためにはまず、自然に親しみ、その仕組みとしての生態系をよく知ってもらう、そしてそれが自然保護活動へと展開していきます。
谷先生はこのような観察会によって多くの人達にそのことを知ってもらい、自然保護活動へのきっかけになればと言われました。
このような谷先生は毎日、奈良公園を歩いて観察、調査されているようです。
そういった小さな積み重ねが今の奈良公園を維持する活動の一環となっています。
今回のハイキングの奈良公園は、お寺から歩いてほんのすぐで、いつでも行けるようなところですが、このような機会がないとなかなか行けないものです。
当日の最後は雨となりましたが、説明を受けながら歩くことが出来ていろいろと発見があり、とても貴重な一日となりました。
ならこうえんのはいきんぐにさんかして (つばい小学校1年 島田 和香子)
きのう、はいきんぐがあって、たにこうぞうせんせいにいろいろなことをおしえてもらいました。もみじのはっぱのことをおしえてもらいました。むささびのいるきもみました。それからみんなでおかあさんのつくったおべんとうをたべました。やっぱりおかあさんのおべんとうは、せかいいちおいしいです。ざんねんながらおねえちゃんは、かぜをひいていけませんでした。おべんとうをたべたあと、あめがざあざあぶりになってすぐかえりました。たのしかったです。