『教行信証の真髄 本願力』より 稲垣 瑞劔法師
仰げば天には日月星辰が燦然(さんぜん)として輝き、法則と秩序と調和を保ちつつ各各その位置を保ち、位置を保ちつつ一糸乱れずして運行しておる。地には山川草木牆壁瓦礫(さんせんそうもくしょうへきがりゃく)があり、動物と植物と鉱物とあり、また幾十億の人類が生れては死し、生れては死し、果てしも知らず断絶と連続を繰り返しておる。この天地万象の一大明珠を指して人間はこれを大自然と云い、大宇宙と云い、また法界と云う。大自然のうちに存する最も不可思議なるものは因果の法則である。生物にありてはこれを業という。心あるものは善悪がある。善因善果、悪因悪果の法則は無始無終にして苦楽万差である。特に人心の中にこの一大法則が自然に貫いておる。これを否定せんと欲するもどうしても否定することが出来ない。この法則は神が造ったものでもなく、仏が造ったものでもなく、人間が造ったものでもない。法爾法然(ほうにほうねん)として、無始無終に、人間のみならず一切衆生に貫通しておる。この法則を道義心と云い、誠という。不思議な法則である。天地の間には心を貫き、物を貫き、万物を貫いて因あれば果あり、果あれば因あり、甲あれば乙あり、乙あれば甲あり、甲なければ乙なく、乙なければ甲なし。この法則はまた自然にして無始無終である。此処に万物が存在しておるとすれば、この因果網ありてこそ存在しておるのである。因縁なければ万物なし、因縁によりてしばらく今日吾人が見る如き現象を呈しておるのである。故に万物は因縁によりて成立しておるということは万古不易の真理である。
天地万物を成立させておるものは因果であり、因縁である。この法則は万物個々の上にあらわれておると同時に万物全体の上にも、中にも、徹頭徹尾大なるものも小なるものも、心にも物質にも、動物にも、植物にも、また鉱物にも、一切のものに同一法則が流れておる。流れておればこそ万物は互に手をつなぎつつ成立しておるのである。斯く考えて来ると天地万物は不可思議なものである。不思議と云っても底が知れぬ不可思議さを持っておるものが天地万物である。故に山川草木といえども凡慮の及ぶところのものでない。
人間は何か、人間は小宇宙である。心とは何ぞ、天地万物と本質的に変ったものではない。それでこそ万物は因果網によりて結ばれ、因縁網によりて成立しておるのである。これまた不可思議である。因縁網によりて成立しておる万物なれば、一つとして孤立的、独立的、実体的の存在なるものはない。
行事の報告
*除夜の鐘
12月31日午後11時40分から除夜の鐘を撞きはじめました。撞き終られた方には、みかんを1つずつ配り、大玄関では、新潟のにごり酒「五郎八」をふるまいました。このように鐘の音の中、午前0時にはみんなで新年を祝いました。
今年は約200名の方が来て下さり、その全員に撞いていただきました。みんな喜んで帰っていかれ、中には、遠く新潟や東京からも来られた方がおられました。
*元旦会
午前7時30分喚鐘の音の鳴り響く中、色衣姿の住職、前住職、院代方が内陣に着座して、参詣者約100名の方々と正信偈六首引のお勤めが始まりました。その後、住職、前住職、岡村門徒総代から新年のあいさつがあり、境内で記念撮影をしました。本堂に戻り、新潟からの「越の寒梅」「八海山」のお酒と、「煮あえ」「糸瓜のお漬け物」をいただきながら、なごやかに新年のお祝いをいたしました。
*淨法会
1月13日(火)午後1時30分より讃仏偈のお勤めの後、『教行信証』の総序の文を唱和して、会は始まります。前住職より本日の稲垣瑞劔先生の法話テープの解説をしていただき、昭和43年12月3日の法話のテープを拝聴いたしました。今回の法話の内容は、前頁に掲載しました『教行信証の真髄 本願力』の文章を基にしたものです。休憩の後、参加者で感想、疑問等についてのお話合いをさせていただきました。奇しくもこの日は瑞劔先生の祥月命日でした。
*写経の会
1月14日(水)午後1時30分、庫裡の円照の間にて、静かに今年最初の写経が始まりました。讃仏偈を書かれる方、重誓偈を書かれる方、正信偈に取り組まれる方、お家で書かれたものを持参される方、めいめいに自分のスタイルで自由に書かれます。指導は山中早百合先生がして下さいます。3時30分ごろからお茶をいただいてお話しに花が咲きます。
*新年初法座
1月20日(火)午後1時から本堂にて「正信偈」のお勤めの後、住職、前住職より挨拶があり、本日のご講師の武田達城先生より『歎異抄』の「ただ念仏して、弥陀に助けられまいらすべしと、よき人の仰せをこうむりて、信ずる外に別に子細はなきなり」というご讃題でお話しいただきました。
「念仏くらいで救われるのか?やさしすぎて受け取れない」、こんな疑問が出されます。しかし、「『観経』には一声の念仏で八十億劫の罪が除かれると説かれ、また、『小経』には難信の法なりと説かれます。」このような語りかけから、武田先生のご法話が展開されていきました。参詣者のみなさんは真剣に聴聞されていました。
午後4時から、庫裡にて新年会が開催され、お寿司と婦人会役員さん手作りのお雑煮をいただきながら、花柳流のおどり、うた、福引きなど、楽しいひと時を過ごしました。
*仏教子ども会
1月24日(土)午前10時から本堂で「らいはいのうた」のおつとめ、「ちかい」の唱和を声高らかにいたしました。
住職から「目標をもって日々の努力を怠らないように。」とのお話がありました。坊守から「一粒の種」というキサーゴータミーが主人公の仏典の朗読があり、佐藤院代の解説がありました。その後、鬼ごっこをし、おやつをいただき、最後は新年会恒例のビンゴゲームをして楽しみました。