海の内外(うちと)のへだてなく

住職 島田 和麿

1、真宗宗歌三番

「海の内外(うちと)のへだてなく み親の徳の尊さを
わが同朋(はらから)につたえつつ みくにの旅をともにせん」

幼いころから法会のときにいつもうたってまいりました。親鸞聖人のこの尊いおみのりが世界を駆け巡るとは想像だにしなかったことでした。
ことしは奇しくも6月には台湾・高雄・法雷寺、7月には中国・福建省・円通寺、そして8月にはドイツ・デュッセルドルフ・恵光センターへと三度海外の佛法の旅のご縁をいただきました。

ドイツ・デュッセルドルフ・恵光文化センター

あみださまのみ光が宇宙に光被しているのです。その大悲のみ心は民族・人種を超え、国のわけへだてなく、純真なる人々の心に映り、勇気とよろこび、慚愧と感謝、そして、真の自由と平和が与えられたのです。
阿弥陀如来の御本願は、私たち一切衆生をいとおしみ心配下さり、いかに愚かで、罪深くとも必ず救いとって永遠の悟りの世界へ導いていくぞとお誓い下さって、今現に大活動をして下さっております。

私たちは、その大慈悲のみ心、南無阿弥陀仏のお名号を聞く一念で早や摂取光中の身の上です。

「生も死も 仏と共に 旅の空」 「見てござる 護ってござる 待ってござる」

2、北米(66寺院)・カナダ(17寺院)・南米(61寺院)・ハワイ(34寺)・メキシコへは百年余り前から邦人が移住し、真宗寺院を建立して今日に至っています。
つい先日もハワイで世界仏教婦人大会が開催され数千人が集まりました。

3、ところがヨーロッパ、アジアの方々は、先方から求めてこられ、QアンドA(質問と回答)が繰り返され浄土真宗に帰依されたのです。
よくよくのご仏縁と言うべきでしょう。台湾中国の方々も然りです。
その受け皿は、本願寺前門さまや、国際仏教文化協会や、学徳の師が応対して受け持って下さったのです。戦後60年の歴史がありました。
戦後、ご本典・教行信証、歎異抄を英訳された瑞劔師を偲んでおります。
ことしは、ドイツ恵光日本文化センターで第14回ヨーロッパ真宗会議と国際真宗学会が4日間に亘り開催されました。
ドイツ、イギリス、ベルギー、ポーランド、スイス、ハンガリー、ルーマニア、アラスカ、オーストラリアから代表者50数名が一堂に会しました。

ほとんど旧知の人々で、それぞれ新しい感動を発表されたのでした。
日本のみなさまにも、そうした現状を是非知っていただきたいと思いまして三回にわたり誌しました。
特に奈良は世界の心のふるさとといってもよい 尊いくにです。今後とも心をあわせ訪問する外国人には誠意を以って接し、この精神文化(仏陀の智慧の栄光)を世界に発信しようではありませんか。

 

ベトナム 女子学生
ファム    ティ   トゥ   ジャン
PHAM  THI  THU  GIANG さん
范     氏    秋    江

本年春のころ、たまたま写経の会のとき、ベトナム僧の話をしておりましたら、門徒の向野幾世さんから、
今、奈良女子大学 大学院博士課程三回生のジャンさんが西本願寺第一代能化職(のうけしょく)(現在の龍谷大学学長)「西吟(さいぎん)」(1609~1663)の研究をされてるとの報せを受けました。

7月20日の定例法話会のとき参加され、はじめてお会いしました。
9月12日(火)午後3時から私たち僧侶7名と門徒有志10名が「浄土真宗における人間観・仏教観」というテーマで2時間30分お話しを聞きました。

素晴らしいのひと言です。日本語、漢文、その論文、論点、内容は専門家以上です。おどろきました。
なぜ「西吟」なのですか?と聞きましたら、日本へ来て親鸞聖人の「教行信証」を読み、身が震うばかりに感動しました。と、即答されました。
来春、卒業論文を提出されたあと再び淨教寺でお話を伺おうと思っております。

2006年10月01日 法話
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