アーナンダ(阿難)が、ウダヤナ王の妃、シャマヴァティーから、五百着の衣を供養されたとき、
アーナンダはこれを快く受け入れた。
王はこれを聞いて、あるいはアーナンダが貪りの心から受けたのではあるまいかと疑った。
王はアーナンダを訪ねて聞いた。
「尊者は、五百着の衣を一度に受けてどうしますか。」
アーナンダは答えた。
「大王よ、多くの比丘は破れた衣を着ているので、
彼らにこの衣を分けてあげます。」
「それでは破れた衣はどうしますか。」
「破れた衣で敷布を作ります。」
「古い敷布はどうしますか。」 「枕の袋にします。」
「古い枕の袋はどうしますか。」 「床の敷物に使います。」
「古い床の敷物はどうしますか。」 「足ふきを作ります。」
「古い足ふきはどうしますか。」 「雑巾にします。」
「古い雑巾はどうしますか。」
「大王よ、わたしどもはその雑巾をこまごまに裂き、
泥に合わせて、家を造るとき、壁の中に入れます。」
ものは大切に使わなければならない。生かして
使わなければならない。これが「わがもの」でない、
預かりものの用い方である。
(財団法人 仏教伝道協会 刊)