浄土の六鳥・共命の鳥

『仏説阿弥陀経』に浄土の鳥として、「また次に舎利(しゃりほつ)弗、 かの国にはつねに種々(しゅじゅ)奇妙(きみょう)なる雑色(ざっしき)の鳥あり。 白鵠(びゃっこう)・孔雀(くじゃく)・鸚鵡(おうむ)・舎利(しゃり)・迦陵頻伽(かりょうびんが)・共(ぐ)命(みょう)の鳥なり。」と、六種類の鳥が名前を連ねています。本堂の内陣の前卓に彫刻されているものをよく見かけます。
今回掲載した六鳥の写真は、住職のふるさと新潟県、明鏡寺の本堂、前卓の彫刻です。

これらの鳥は、罪の報いで鳥に生まれ変わったのではなく、仏法を説き弘めるために阿弥陀仏が姿を変えて現れ出て下さった鳥たちです。

白鵠(びゃっこう)は、白鳥または天鵞(てんが)(天の鵞鳥(がちょう))ともいわれる水鳥。コウノトリともいわれるが、白い美しい鳥で声と共に姿の美しさからもお浄土と仏さまの清らかなることを象徴しています。

孔雀(くじゃく)は、実際にご覧になられた方も多いと思います。羽を広げた孔雀の美しさは格別ですし、威容があります。また、毒蛇やサソリ、毒虫を好んで食べることから益鳥としても大切にされてきました。これは、煩悩を払う象徴であり、仏さまの智慧の偉大さを象徴しているのです。

鸚鵡(おうむ)は、頭に冠羽とよばれる飾り羽根があり、人の言葉を真似る鳥として有名です。舎利と共に人の言葉を理解する賢い鳥として登場します。

舎利(しゃり)は、シャーリカの音写。 鶖(しゅう)鷺(ろ)・百舌鳥(もず)などとも意訳される。 (釈尊の教えに十悪があるが、その中の両舌は二枚舌のことである。百舌鳥とは百枚舌かと思いきやそうではなくて、百通りの言葉を真似て理解することができるということらしい)九官鳥の一種ともいわれ、人間の言葉を真似することができるという鳥の名です。

迦陵頻伽(かりょうびんが)は、カラヴィンカの音写。 好声(こうしょう)・妙声(みょうしょう)・美音(みおん)・妙音(みょうおん)鳥(ちょう)などと意訳されます。卵の殻の中にいる時、 すでによく鳴き、 極めて美しい声を出すという美しく妙なる音声で鳴く鳥の象徴です。

共命(ぐみょう)の鳥(とり)は、命命鳥(みょうみょうちょう)ともいわれ、人面禽形(にんめんきんぎょう)といって顔は人の顔で、身体は鳥の姿をとっています。身体が一つで、頭が二つに分かれている鳥です。まさに名前の通り「命を共にする鳥」で、きわめて美しい声を出すという鳥です。

 

共命(ぐみょう)の鳥(とり)のはなし

また、この一つの身体に二つの頭という共命(ぐみょう)の鳥(とり)に関しては、一説によると、極楽浄土に生まれる前、すなわち前世では大変、仲が悪かったと言われています。
片方の頭が「右へ行きたい」と言えば、もう一方の頭は、「いや私は左へいきたい」と言い、片方の頭が「もっと遊びたい」と言えば、もう一方の頭は「いや、もう遊ぶのは飽きた、休みたい」というように、事あるごとに意見が衝突していました。
身体が別々であれば、さして問題にならないのですが、身体が一つですから、当然そこで大喧嘩が起こります。
こうして毎日毎日、言い争いをしていたのですが、ある日、とうとうその喧嘩が高じて、片方の頭が相手の頭に毒の実を食べさせました。
ところが身体が一つですから、両方ともに命を落としてしまう羽目になったのです。
その命を落とす寸前に、その毒の実を食べさせた頭が、大切なことに気付き慚愧しました。
「これまで私はわがままを言いながらも、何とか元気で来られたのは、あなたがいてくれたからだった。」「この私の命はあなたの命の上に出来上がっていたのだ。」ということに気付いたのです。これを、「縁起の道理」と言います。このことによって極楽浄土に生まれたということです。

 

浄土の六鳥(ろくちょう)の音声(おんじょう)・宝林(ほうりん)宝樹(ほうじゅ)の微妙(みみょう)の音

これらの鳥たちは、昼夜にそれぞれ三度ずつ、やさしく美しく鳴きます。その声は、さとりへ導く修行の徳目である、五根・五力・七菩提分・八聖道分の教えをのびやかに説くのです。この声を聞くことによって、皆一様に仏を念じ、法を念じ、僧を念ずるのです。(中略)また、この仏の国土では、そよ風が、さまざまな宝でできた樹木や枝を吹きぬけるたびに、美しい音色をたて、まるで百千種の音が、同時に音楽を奏でるように、その音色を聞く者は、おのずから、仏を念じ・法を念じ・僧を念ずるのです。仏の国土では、このようなすぐれたはたらきと美しさが完成されているのです。と『仏説阿弥陀経』の中に説かれています。

このような浄土のもろもろの六鳥の妙なる音声も、宝林宝樹の微妙の音もそのままが南無阿弥陀仏の名号となって私たちのもとへ、響き渡って下さるのです。お念仏となって私たちの上に伝わってくる美しい阿弥陀さまの音声なのです。

蓮如上人は、ウグイスをめでられたということです。「ホウ、ホケキョ。」と鳴いているその声は、「法(ほう)、聞(き)け今日(きょう)!」と、阿弥陀さまがご催促して下さっていると尊ばれました。

美しい音声は人の心を和らげ、なごやかにしてくれます。真実に導いて下さる「仏説(ぶっせつ)」として仏さまの御声を自然の響きの中から感じ取らせていただき、お聞かせいただきましょう。

2017年04月01日 法話
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