浄土真宗のご本尊は立っておられる?座っておられる?

今年のNHK大河ドラマは「軍師官兵衛」です。
3月14日の朝日新聞に以下のような記事が出ていました。

大河「官兵衛」、仏像間違えた NHKに視聴者指摘
NHKは13日までに、大河ドラマ  「軍師 官兵衛」の石山本願寺の場面で、誤った仏像のセットを使用したとしてホームページ上で謝罪した。
間違えたのは3月2日に放送された第9回。本来「阿弥陀如来像」が置かれているはずの場面に、誤って「釈迦如来像」を使用したという。視聴者から「仏像が違うのでは」との指摘が3件あり、判明した。
オンデマンドでは、仏像が映った場面を削除した映像を流しているという。

上の写真がその時の番組の映像写真です。確かにお座りになっているお釈迦様がご安置してあります。明らかにこれは間違いです。
皆さんもこんな身近なところから仏事に親しんで頂いてはどうかと思います。
両親も当日番組を見ていて、あれご本尊が間違っているなと言いながら見ていたそうです。ですからNHKへの指摘は3件となっていますが、多くの番組を見ていた方々が気づいていたことでしょう。

「軍師官兵衛」第9回の内容を要約すると、天正3年(1575)10月、官兵衛の働きで、播磨の三大勢力である小寺氏、別所氏、赤松氏を織田信長との謁見で織田方へなびかせた。ところが翌年4月仏敵の織田信長に味方する官兵衛の居城から本願寺門徒の侍女3人が出て行ってしまう。そのころ今の大阪城にあった石山本願寺では、信長と戦うために一向宗の門徒たちが結集していた。その中心が本願寺第11世、顕如上人であった。顕如上人は、足利将軍を迎え入れた毛利氏の後ろ盾を得て、織田軍と戦う決意をしていた。それから間もなくして、英賀の港におびただしい数の毛利軍の船が押し寄せた。官兵衛は、覚悟を決めた表情で戦いの支度を整えるように命じるのだった。という内容です。

その中、石山本願寺で顕如上人と一向宗の門徒たちが話をしている場面で、ご本尊が出てきたところで間違ったご本尊が映し出されたのです。

このことから学ぶべきことは、「専門家に確認してことを運ぶべし」ということでしょうか。仏事であればお寺に聞く。病気であれば医者に見てもらう。というようにです。私たちはややもすると素人判断で病気にしろ、仏事にしろ、冠婚葬祭全般にわたって、勝手に気決め付けてとか、専門でもない近所の人や友人に聞いて間違ってしまうことがないでしょうか。
どうぞ、仏事に関しましてはお寺のものに気軽にご相談ください。

浄土真宗のご本尊はお立ちになっているのが本当です。
宇治の平等院の阿弥陀様はお座りになっておられます。
西方極楽浄土で教えを説いておられるお姿としての座像です。
その西方浄土から私たちのもとに出てきてくださったお姿が浄土真宗のお立ちになった阿弥陀如来立像です。

『観無量寿経』の中で、韋提希夫人に対して
「仏、まさになんぢがために苦悩を除く法を分別し解説すべし。」(浄土真宗聖典(註釈版)P97)
と、仰ったと同時に、空中に阿弥陀仏が現れます。

お釈迦様は、苦しみ悩む韋提希夫人にたいして「苦悩を除く法」を説かれました。お釈迦様が説かれることに応じて、阿弥陀仏は韋提希夫人の前に現れて下さいました。

その御心を善導大師は「観経疏・定善義」のなかで、
「なぜ阿弥陀仏が仏のさとりを開かれているのに、他の仏のように蓮台におすわりになったままで人々に対応されないのか?」という問いを出して
「阿弥陀仏が座っておられないのは、特別に深い御心があったからです。よくよく考えて見ると、この娑婆世界は苦しみの世界です。いろいろな悪人がおり、四苦八苦に苦しめられて、思うようにならないことばかりが起こってくる。煩悩によって、地獄・餓鬼・畜生の火坑にいまにも堕ちようとしている。もしいま立ち上がって、迷いにさまようものたちを救いに行かなければ、悪業にしばられて、三悪道の牢屋から離れることができないです。こういうわけで、阿弥陀仏は、立ったまま私をつかみとられて浄土へ連れて行かれるのです。このようなわけで座って相手に応じることをなさらないのです。」と、このように答えられています。

よちよち歩きの子どもが、庭の池に落ちそうになっている時に、縁側で仕事をしている母親はじっとして仕事を続けているでしょうか?
仕事をほりだして、わが子のもとに駆け寄っていくに違いありません。
そしてわが子を抱きかかえて「落ちなくてよかったね。お母さんが悪かったね。ゴメンネ。」と泣いてケガのなかったことをよろこばれるでしょう。
危なっかしい私を真っ先に救い取ってくださるのが阿弥陀仏の大慈悲であります。これを「救急の大悲」とも申します。

現に、いま救い取ろうと働いておられるのが阿弥陀仏です。
空中に住立し、立ちつつ私をつまみ撮ってお浄土へ連れて行かれる「立撮即行の住立空中尊」としての阿弥陀如来が浄土真宗のご本尊なのです。

2014年04月01日 法話
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