5月26日(土)淨教寺仏教子ども会開催時に、読売テレビの朝の番組の取材があった。「地獄」の絵本を読み聞かせているところを撮影して、子供たちにインタビューをしたいとのこと。
6月25日(月)朝日新聞夕刊一面に「〔地獄〕涙目くぎ付け 絵本増刷 しつけの劇薬?」という見出しで、「地獄」(東京・風濤社(ふうとうしゃ))の絵本が取り上げられていた。
ブームのきっかけは昨年末、人気漫画家の東村アキコさんが育児漫画「ママはテンパリスト」で「うちの子はこの本のおかげで悪さをしなくなった」と紹介したことで、テレビで取り上げられ人気が高まったとのこと。
2世代、3世代同居が当然だったのは戦後すぐまで…高度経済成長のなか、人口の都市流入が続き、核家族が当然の今。おじいちゃんおばあちゃんから地獄の話を聞くなんてことは皆無に等しくなってきている。また、家族の死を家で看取ることもほとんどないといっていい。
そんな中、死を見つめ、自分の生きざまを見つめ、それにアドバイスをしてもらうこともなくなってきた。
1980年、今から32年前、いじめが社会問題となり、子供の自殺が相次ぐことに心を痛めた風濤社の高橋行雄前社長が「命の大切さを教えたい」と、この「地獄」の絵本を企画したそうだ。
この絵本の絵は、千葉県南房総市の延命寺が所蔵する江戸時代の地獄絵巻を使った非常にリアルで大人が見ても身の毛がよだつもので、子供には刺激が強すぎるかもしれないが、ぜひ親子一緒に見て読んでいただき、話し合っていただければありがたいと思う。
そして、このことが親鸞聖人の歩まれた道(「生死出ずべき道」何のために私は生まれ、何のために毎日を生き、死んだらどうなるのだろうか?という疑問の解決)を学ぶきっかけになってくれたらと願っている。
地獄の一例をあげてみると、
なます地獄
牛や馬やうさぎはもちろん、さかなやむしのせわをなまけて殺したものは、生きながら、からだをきりきざまれて、殺されたもののくるしみをあじわうのである。
かまゆで地獄
うそをついたり、やくそくをやぶったものは、この、かまゆで地獄でくりかえしくりかえしにられていくのである。
はり地獄
つげ口をしたり、ほかの人をばかにして、わる口をいったりしたものは、このはり地獄におとされるのである。
もう一冊、「地獄と極楽」という仏教マンガが大道社から出版されている。
このマンガは、私も坊守も小さいときに両親に買ってもらいよく読んだものである。
坊守曰く、子どもごころに、興味津々で読み進めていった。何度も何度も読まずにはいられなくて、気が付いた時には本がぼろぼろになっていた。
地獄を読み終えた後、極楽にたどり着いたところを読み、美しさとあたたかさににほっと安心した気持ちが今でも忘れられずに、懐かしくまた手に取って読み続けている大切な本です。ぜひともこの本も、家庭に一冊、こころの常備薬としておいて、機会あるごとにお読みいただければありがたいなあと思っています。
本文から一部抜粋します。(ご自身のこととして、あじわってください。)
等活地獄(とうかつじごく)
いかにくいても、もうおそいぞ。死後の苦しみをせぬよう、
仏の教えに従って、なぜ正しい行いをしなかったか。おろかものめ。殺生をおかした罪の報いを知れ。黒縄地獄(こくじょうじごく)
生き物を殺したうえ、盗みをはたらいた罪だ。そのためにどれだけ多くの人が迷惑をして泣いたことか。衆合地獄(しゅうごうじごく)
生きているうちに、なぜ気づかなかった。仏の教えを信じなかった。おろかものめ。
いたわることを知らず、生き物をこうしていじめて殺したから、今度は自分がそうなる番だ。叫喚地獄(きょうかんじごく)
のどが渇いて、水を飲みたくても、水が火に変わって飲むことができない。しかし、そこで同じ罪人の中でも、水を飲める者がいる。
この者には、娑婆から供養が届いたのだ。
残された妻子が、亡き人の後世を願い、立派な供養をしたその善根が閻魔大王さまに届いたのだ。
仏を信じ、仏に供養することは何にも勝る善い行いなのだ。
おまえたちは、それを知ろうともせず、仏の教えに背き、生き物を殺し、ものを盗み、よこしまな暮らしをしてきた。その報いで地獄に落ちたのだ。大叫喚地獄・焦熱地獄(だいきょうかんじごく・しょうねつじごく)
この世にいるときに尊い仏法に帰依したなら今日の苦しみは見もせぬものを、ただいたずらに日を過ごし、悪事をはたらいたおろかものめ。仏に背いた罪は、何万年といえども消えぬぞ。大焦熱地獄・阿鼻地獄(だいしょうねつじごく・あびじごく)
絶えずつづく、地獄の責め苦。おそろしい鬼、うずまく火、
いきかえっては、さいなまれる八大地獄の罪の報い。おそろしいことである。
極楽
あなたのお家の方が、仏さまを信じて、ご法事を続けているその功徳で、極楽へお迎えされたのです。
「親らしいこともしてやらなかったのにすまない。仏さまありがとうございます。」
「おなかがすいたなあ。・・・あ!ふしぎ、食べ物が出てきた。」
「ずいぶん長い箸だな。どうやってたべるのかな?」
それはお互いに食べさせてもらうのですよ。長い箸を使って、相手の口に食べ物を運んであげる。そして、自分は相手から食べさせてもらうのです。
「なるほど、お互いに助け合っていくものですね。」
「おかげでおいしくいただきました。ごちそうさま。」
「子どもたちよ。ほとけさまをうやまい。その教えをまもっておくれ。」